コツコツと修行を重ねたオーナーであるシェフがお店を開業される際に声をかけて頂いた。物件探しから一緒に行ったこの案件は、兼ねてから魅力を感じていた米子城外堀と旧加茂川が合流する場所にある明治初期の緩やかな勾配の切妻屋根と用水沿いの石垣を持つ、美しいけれど長い間使われていなかった建物に想いが一致。この建物を修復し、お店として甦らせることができた創作料理店。外堀を背面に「鰻の寝床」建築であった建物は、ファサードとしての城下メインストリート側が、いつの頃からか「みせ」として、時代ごとの改装を繰り返していたよう。細かな従来の姿は解らなかったが、玄関を入ると正面に細長く続く2尺強の通路を厠、裏庭へと続く小路として建仁寺割竹をしならせた竹垣に灯りを仕込み、手前のカウンター席、奥の座敷からもそれぞれ眺める事ができる景色にした。カウンター席のある厨房は、旧加茂川越しに営みを感じられるようにガラス張りとしつつ、通りを行く人々と席に座る人の目線が合う事無く過ごせる様、作業用手元灯ボックスを設けた。客間兼居間であった奥の座敷は用水と庭に面する縁側をそのままに大開口のはめ殺しガラスで内外を心地よい距離感で繋げた。同店は「第2回平成の米子市都市景観施設賞受賞」に選ばれた。

AREA : 鳥取県米子市
DATA : 2007年施工 木造
CLIENT : https://kuriya0328.com/

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